Ball lightning(球電) という電気エネルギーが浮遊? 実際はCGを用いた映像【ファクトチェック】
球状の光体が線路上を浮遊する動画が拡散しましたが、CGを用いた動画で、現実の映像ではありません。ただし、今回の動画とは別に「球電」という自然現象があります。雷雨中やその後に発生する球状の電気エネルギーで、空中を短時間浮遊する現象です。
検証対象
2024年9月7日、球状の光体が線路上を浮遊する動画とともに「これは "Ball lightning" という、雷などの強い電気エネルギーが球状に固って帯電したまま大気中を浮遊する物理現象だそうです。もしこれを見ちゃったら🔥幽霊とか人魂を見っちゃったと思うでしょうね⁉️😭」という投稿がX(旧Twitter)上で拡散した。
2024年9月13日現在、この投稿は470万回以上の表示回数と4500件以上のリポストを獲得している。
この動画をめぐっては2020年以降、AFP、SnopesやIndia Todayがファクトチェックしており、いずれも球体が浮遊している実際の動画ではなくCG技術を使った動画だと判定している。
検証過程
拡散した動画は5年前に投稿されたもの
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、拡散した動画をGoogle画像検索で調べた。拡散した動画のオリジナルは、2019年にベラルーシを拠点に活動する3DアーティストがYouTubeに投稿した動画であるとわかった(AFPも参照)。
この動画のタイトルや概要欄はベラルーシ語で書かれていた。Chat GPTで翻訳すると、タイトルは「線路近くでビデオに捉えられた球電(CGI)」。投稿主がこの動画をCGI(Computer Generated Imagery)で作成し、無断転載を禁止していることがわかる。
動画の作成者「CGを使った」
動画の作成者(Andrei Trukhonovets)は、アメリカのファクトチェック機関「Snopes」に、コンピューター・グラフィックスの勉強を始めたころに制作した動画だったとコメントし、本物の現象を撮影した動画としてネット上に拡散していることを嘆いているという。
AFP通信のファクトチェックによると、Trukhonovetsは動画編集ソフトのAdobe After Effectsを使ったといい、撮影地はベラルーシの首都ミンスク近くの線路だったと説明する。
また、衛星放送ヒストリーチャンネルはこの動画を犯罪科学の映像解析や気象学の知見から分析し、Trukhonovets自身もインタビューでCGで球状の物体とその動きを作成したと認める。
自然現象としての「球電」
今回の動画は、英語圏で"gobular bolt" 、"ball lightning"あるいは"sphere lightning"という名称で拡散した。これは日本語では「球電」という名で呼ばれる。
球電とは、雷雨の最中やその後に発生する自然現象。直径20~25㎝の球状で、色は橙や青白など多岐にわたる。地表付近の空中に現れたのち、数秒から長くて数分の間にわたって不規則に動く。発生原因は解明していないという(コトバンク)。
判定
球状の電気エネルギーが浮遊する動画が拡散しましたが、現実のものではなく、誤りです。オリジナルの動画の作成者は、CG技術を使って球状の物体とその動作を作成したと複数のメディアで認めています。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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