天皇陛下や上皇陛下がエプスタイン氏と写った画像?AI生成による捏造【ファクトチェック】
天皇陛下や上皇陛下が、性的な人身売買疑惑で問題となった米国の実業家ジェフリー・エプスタイン氏と共に写った画像が複数拡散しました。これらの画像は全て捏造されたもので、誤りです。X(旧Twitter)に搭載されている生成AI「Grok」によって生成された、実際には存在しないフェイク画像です。
検証対象
2024年12月22日以降、天皇陛下や上皇陛下とエプスタイン氏が写った画像が複数拡散した(例1、例2、例3)。
「AI生成画像」「合成」との指摘もあるが、「決定的な写真が出てきたよ」「公務でのエプ島訪問ですか?」などのコメントも寄せられており、この画像を本物だと信じてしまう人もいることを示している。
検証過程
ジェフリー・エプスタイン氏による未成年への性的搾取疑惑
エプスタイン氏は米国の元実業家(故人)だ。児童を含む未成年への性的暴行・売春斡旋などに関与したとして2019年7月に逮捕・起訴されたのち、8月に拘置所内で死亡した(BBC)。
エプスタイン氏をめぐっては、その幅広い交友関係からこれまでに多くの著名人が疑惑に関与しているのではないかとの情報が拡散している。
不自然な点のある画像、AI生成の透かしも
今回検証対象とした画像には不自然な点がいくつかある。
ビーチで天皇陛下とエプスタイン氏が写っている画像は、隣にいる二人に当たっている日光の陽射しでできる陰の方向がバラバラだ。天皇陛下の右頬のほくろも、宮内庁が公開している画像と位置が異なっている。
上皇陛下がエプスタイン氏と親しげに寄り添っている画像では、二人が接している側の洋服の袖に太さがなく垂れ下がっている。このような画像の不自然さはAI生成画像の特徴といえる。
そして、拡散した画像の右下にはいずれも「GROK」と透かしが入っている。この透かしは、Xに搭載されている生成AI「Grok」によって生成された画像のものだ。
つまり、これらの画像はGrokによって生成された画像で、実際には存在しないフェイク画像だ。
AIやディープフェイクによる画像・動画を検知するTrueMedia.orgのツールでも、これらの画像は全て生成AIによるものだという「決定的な証拠がある」との判定だった。
判定
天皇陛下や上皇陛下がエプスタイン氏と共に写っている写真は捏造されたもので誤り。Xの生成AI「Grok」によって生成された、実際には存在しないフェイク画像だ。
あとがき
生成AIの進歩は目覚ましく、これからの私たちの生活はAIなしには成り立ちません。日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、AI活用に関するガイドラインを策定した上で、記事のトップ画像生成や翻訳などにAIを積極的に活用しています。
その一方で、AI生成による画像や動画、いわゆる「ディープフェイク」も巧妙化し、実際の画像との区別が非常に難しくなっています。
2022年9月に台風による被害状況をドローンで撮影したとされる画像が拡散しましたが、実際は生成AIによる画像だったという事例がありました。また、2023年11月には岸田首相(当時)が日本テレビのニュース番組で卑猥な内容を話す動画が動画投稿サイトで拡散しましたが、生成AIで音声や画像を捏造したものでした。JFCはこれらも検証しています。
目の前にある画像や動画が本物とは限らないこれからの時代では、一人ひとりがクリティカル・シンキングで吟味したり、多角的に情報を収集するなどして偽・誤情報に対抗する必要があります。
JFCでは生成AIによる情報への影響と、それらに対するファクトチェック手法を解説しています。参考にしてください。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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