ファクトチェッカーが実践している生成AIによるディープフェイクの見分け方【解説】

ファクトチェッカーが実践している生成AIによるディープフェイクの見分け方【解説】
画像はAI生成

事件や災害など大きなニュースが報じられるたびに、生成AIで作った「ディープフェイク」が拡散するようになりました。

一見、本物のように見えますが、見分けるコツがあります。日本ファクトチェックセンターが実際に使っている検証手法を解説します。

1.透かしやロゴや投稿者の確認

最も簡単な手法は、AIで生成したことを示す「透かし」や「ラベル」がついていないかを確認することです。

OpenAIのSoraやGoogleのGeminiなどの生成AIツールで動画を作ると「透かし(ウォーターマーク)」が入ります。また、YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームでは、投稿者がラベルをつけることもあります。

上記の画像の赤丸や黄色線で示しているのが、透かしやラベルです。動画を見たら、まず、これらがないかを確認しましょう。あれば、生成AIです。

また、投稿者のアカウントを見ると「AIアーティスト」などと自己紹介していたり、他にも多数のAI画像を投稿している例もあります。

2.描写の破綻

実際には透かしやラベルがないディープフェイクも多数存在します。そういった場合には、細部を確認して描写に破綻がないかを探します。

例えば、以下の動画を見てください。「2026年1月にアメリカによるベネズエラでの軍事作戦を喜ぶ民衆」とされる動画です。実はこれも生成AIで作ったもので、現実の映像ではありません。

描写を確認してみます。まず、中心にいる老人の右後ろに映っている男性が手にもっている旗が突然消えます。

静止画で見ると次の通りです。

また、細部のデザインが実物と異なっています。例えば、老人の左後ろに映っている旗。色はベネズエラの国旗ですが、星の数が明らかに多すぎます。本物の国旗は、青い部分に8個の星が弧を描いて並んでいます。こんな重大な場面で、わざわざ実物と異なる国旗を掲げる人はいないでしょう。

以前の生成AIは、歯や目や指などの描写が破綻していることがよくありました。進化した最近のAIは人間の描写はかなり自然に近づいてきましたが、複雑なデザインでミスをすることはまだまだあります。

ファクトチェッカーは以下のような点をよく見るようにしています。

・人間の手や指や髪や歯などの描写が破綻している。
・背景の看板に書かれている文字が崩れている。
・連続した動画なのに、一部で画像がカクカクする。
・突然、ものが現れたり消えたりする。
・顔などの輪郭の境界線がぼやけている。
・背景の構造物と影が一致していない。
・直線であるべき構造物が歪んでいる。

3.関連情報との比較

人間の顔の描写が自然になってきたように、細部を確認しても見分けがつかないディープフェイクも増えてきています。そういった際に頼りになるのが「関連情報」です。

例えば、大きな地震があった際に「津波の映像です」という動画を見たとして、それがディープフェイクではないと確認するために調べるべき関連情報は「気象庁の公式情報」や災害報道に定評がある「NHKの速報」です。

そのどちらもが津波の被害を伝えていないとしたら、その動画の信頼性はかなり低いと言えるでしょう。

海外で多いのが、政治家や著名人の言動を捏造したディープフェイクです。そもそも、その人物がそのような発言をする可能性はあるか。その人物はそのときにそこにいたのか。動画だけを見て信じるのではなく、関連情報と比較しましょう。

4.検証ツールの活用

最後に紹介するのが「検証ツール」です。テクノロジーにはテクノロジーで対抗する必要があります。世の中には、ディープフェイクを検証してくれる無料ツールが存在します。

例えば、「Hive Moderation(Hive AI Detector)」は、ウェブサイトから画像、音声、20秒未満の動画などをアップロードすることで、AI生成かどうかを判定してくれるツールです。

これらに気になる画像や動画などをアップロードすれば、AIで作ったり、加工したりした可能性をパーセンテージで示してくれます。

ただし、これらのツールは完璧ではありません。画質を落とした画像では精度が落ちるという弱点もあります。JFCでは最後の確認で使うだけにとどめています。

いずれは精度が非常に高いツールも普及する可能性がありますが、技術のイタチごっこが続くかもしれません。

そのためにも、1~3の手法を個々人が身につけておくことが必要です。

ちなみに記事の冒頭画像は私の顔写真を使って「この人物がディープフェイクの見分け方を教室で教えている画像をつくって」と指示を出したものです。

拡大してみると、スクリーンに映った文字や、手の指などにAI生成的な特徴が見られます。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研との共催で「情報インテグリティシンポジウム」を開きました。AIによるディープフェイクの氾濫、選挙とファクトチェック、メディアリテラシーの普及など、各分野の専門家で議論しました。 状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。発表やパネル討論の内容は今後、記事にしていきますのでしばらくお待ちください。 情報環境の悪化は「今週のファクトチェック」の内容を見ても明らかです。日本に関する誤った情報が多言語で拡散し、逆に英語から日本語へと浸透していく現象も加速しています。 例えば、「高市早苗首相が訪米時に長崎に原爆を落としたパイロットの墓に献花した」という情報はロシアやイランのメディアが報じ、英語でも拡散しました。「バイデン元大統領が死去」という情報は、エイプリルフールの英語でのネタ投稿がXの自動翻訳機能で日本語になっていました。 JFCでは、日本に関する偽・誤情報が海外でも拡散している場合には、英語でも発信するようにしています。ソーシャルメディアで国境を超えて正確な情報を広げるためだけではありません。生成AIが誤った情報を学習するの

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
バイデン元大統領が死去? エイプリルフールネタが日本語で拡散【ファクトチェック】

バイデン元大統領が死去? エイプリルフールネタが日本語で拡散【ファクトチェック】

米国のバイデン前大統領が死去したという情報が拡散しましたが、誤りです。2026年4月3日時点でそのような情報や報道はありません。Xの投稿が自動で翻訳されるようになったことで、現地のエイプリルフール投稿が日本語で拡散しました。 検証対象 拡散した投稿 4月2日、「バイデン元大統領亡くなったのかよ、、、」という投稿が拡散した。投稿には「速報: 元アメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンが83歳で死去」と書かれた投稿のスクリーンショットが添付されている。 検証する理由 4月3日現在、この投稿は360件以上リポストされ、表示回数は496万回を超える。投稿には「まあ年齢的にも仕方ないよね」「まさか、バイデン」というコメントの一方で「こういうのはダメだよ」という指摘もある。 検証過程 拡散した画像はエイプリルフール投稿 拡散している投稿の画像は、別の投稿者によるXの投稿をスクリーンショットしたものだ。画像に表示されている日時は、日本時間の4月2日午前3時になっている。 しかし、この元の投稿者は、直後のリプライ欄に「today's date Wednesd

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月25日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0425.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)