AI生成の偽情報検証に市民協力、ソ連のプロパガンダを学ぶゲームなど偽情報対策の先端事例を表彰 グローバル・ファクト11
国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の第11回年次総会「グローバル・ファクト11」では、4部門で世界の優れたファクトチェックや偽情報対策などを表彰する「グローバル・ファクト・アワード」も開催されました。
狭義のファクトチェックを超え、総合的に偽情報対策に取り組む調査報道的な記事、テクノロジーを活用して市民も巻き込む革新的なコラボ、ゲームでプロパガンダの手口を学ぶ教育的なコンテンツや、偽情報に多い性差別的な内容について調べた研究が受賞しました。
「最高の影響」はパレスチナに関する検証記事
4部門は「Highest Impact(最高の影響)」「Most Innovative Collaboration(最も革新的なコラボレーション)」「Most Creative Format(最も創造的なフォーマット)」「Best Reserch(最高の研究)」。
「最高の影響」部門は、トルコのTeyit。「What do we know about the allegation that Palestinians sold their land?(パレスチナ人が土地を売ったという疑惑について、何を知っていますか?)」という調査報道的な記事で受賞した。
TeyitのファクトチェッカーÖyküm Hüma Keskin氏はこの記事で、イスラエルとガザの紛争をめぐって長年語られている「パレスチナ人が金のためにイスラエル人に土地を売った」という言説を検証した。歴史的な記録や地図などを用いて、イスラエル人に土地を売ったパレスチナ人はいたが、拡散している主張よりもずっと少ないという事実を確認。土地売却とイスラエルの建国が直接関係しているわけではないと結論づけた。
「最も革新的なコラボ」は生成AIの検証に市民協力
「最も革新的なコラボ」部門は、インドのMisinformation Combat Alliance(誤情報撲滅同盟)。インドで活動する12のファクトチェック団体が協力し、メッセージアプリ(WhatsApp)にDeepfakes Analysis Unit(ディープフェイク分析班)という情報提供窓口を立ち上げた。
ユーザーは、生成AIで作ったと見られるコンテンツをこのアカウントに通報できる。寄せられた情報をファクトチェッカーだけでなく、学者やテックプラットフォームの技術者らも協力して分析し、定期的に調査結果を公表している。
すでに500を超える音声や映像などのディープフェイクを分析し、14のレポートを公表。今後は寄せられた情報のデータベースを外部の研究者も利用できるように公開することを検討しているという。
「最も創造的なフォーマット」はプロパガンダの手法を学ぶゲーム
「最も創造的なフォーマット」部門は、ジョージアのMyth Detector。ソ連時代から続くプロパガンダの手口を知るOperation Infektionというゲームを開発した。
ゲームのプレイヤーは旧ソ連の情報機関「KGB」に潜入するという設定で、KGBに関する知識を学ぶ。1983年に実際にあった偽情報工作なども題材にし、現代に続く影響工作との類似点を知ることを目的としている。
「最高の研究」は性差別的なヘイトスピーチに関する研究に
「最高の研究」もMyth Detector。「Sexist Language and Gendered Disinformation(性差別的な言葉とジェンダーの偏りがある偽情報)」という研究で2つ目の受賞だった。
研究では、ジョージアの伝統的なメディアやフェイスブックアカウントなどから女性やLGBTQ+に関する誤情報や偽情報を収集して分析し、性差別や同性愛嫌悪を示すメッセージを特定していった。
JFCとグロコムの2万人調査もファイナリストに
アワードには世界中のファクトチェック団体から合計113の応募があり、4部門合計28の候補作の中から、240人のファクトチェッカーによる投票で受賞者が選ばれた。
日本ファクトチェックセンター(JFC)は国際大学グロコムと共同で実施した2万人調査で応募し、「最高の研究」部門のファイナリストとなったが、受賞は逃した。
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