ファクトチェックが対象とする「客観的に検証可能な事実」とは何か【解説】

ファクトチェックが対象とする「客観的に検証可能な事実」とは何か【解説】

ファクトチェックは真偽検証や事実検証と訳されます。その意味は「オピニオンではなくて、客観的に事実を確認できる内容について検証する」ということ。では実際にどのような情報について検証をしているのか。ファクトチェッカーの間で意見が分かれることもある、「対象の捉え方」について解説します。

「岸田首相は最悪」「安倍政権はワースト1位」?

「岸田文雄氏は最悪の首相」という言説があったとする(そういう投稿はたくさんある)。これはファクトチェックの対象にはならない。「最悪だ」というのは主観的な意見で、客観的に検証できないからだ。ある人にとって岸田首相が最悪だったとしても、支持する人もいる。

一方で、安倍政権に対して「自殺者数ワースト1位」「失業率増加ワースト1位」などという言説は検証できる。統計データで他の政権と客観的に比較できるからだ。日本ファクトチェックセンター(JFC)で実際に検証した事例で、判定はともに誤りだった。

安倍政権は歴代総理ワースト1位?【ファクトチェック】
「自民党政治と安倍政権の実績」というタイトルで安倍政権を批判する画像が、再び拡散しました。過去何度も繰り返された誤った情報です。小泉政権・鳩山政権時代にも類似した画像が拡散しており、政権批判でよく用いられる手法です。 検証対象 Twitterなどで拡散した「自民党政治と安倍政権の実績」と題する画像はこれだ。小泉政権、鳩山政権時代に拡散された画像と各項目が類似しており、誤った情報が含まれている。 BuzzFeed Japanは2018年と2022年にファクトチェックをし、「虚偽画像が拡散」と報じている。しかし、この画像を拡散するTwitterアカウントのリプライ欄には、「やべ~この国終わってんじゃん」「これはひどい実績ですね 国葬にする理由がますますわからないな…」など、画像を信用するコメントがいまも散見される。 検証過程 JFCは、公式資料から12項目を検証をした。定義が曖昧であったり、公開資料では判然としなかったりした項目は検証から除いた。 1.「GDP下落率…歴代総理大臣ワースト1位」= 不正確 1995年度以降で、実質GDPの前年度比が最

意見ではなく「事実」を検証

ファクトチェックの原則は「意見ではなく客観的な事実であるかのように提示されている部分が事実かどうかを検証する」ということだ。

「雲が出ている。雨が降りそうだ。傘を持とう」という人がいたとして、検証をするのは「雲が出ている」という事実を提示している部分。「雨が降りそうだ」という推測や「傘を持とう」という意見は、その人の自由だ。

ファクトチェックは「事実」の検証 オピニオンは自由 【JFCファクトチェック講座 理論編5】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 理論編の第4回は偽・誤情報対策として役に立つだけでなく、メディアリテラシーの基本でもある「クリティカルシンキング」について解説しました。第5回はいよいよ事実の検証、ファクトチェックについて、その基礎から説明します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックはオピニオンチェックではない ファクトチェックとは「事実の検証」、検証可能な事実を検証するものです。誰かの意見を検証するオピニオンチェックではありません。 日本ファクトチェックセンター(JFC)ではファクトチェックを「言説に含まれる事実について客観的に検証し、正確性を評価すること」と定義しています。 まずは事実と意見を明確に区別する必要があります。 言論の自由とファクトチェックの役割 民主主義国家の日本では憲法19条で思想及び良心の自由、憲法21条で言論や表現の自由を保証しています。 多様な意見は非常に重要ですが、それらが嘘や誤解に基づいている場合、その部分のファクトチェックが必要です。

ただ実際には「これは事実の提示か。それとも意見か」と迷うことが多い。検証を始めてから「客観的なデータで結論をつけにくい」と気づくこともあるし、ファクトチェックに携わる人の間で検証対象にすべきかどうかで意見が別れることもある。

国語のテストを思い出してほしい、文章から「事実」を抜き出す問題と登場人物の「意図」を答える問題。あなたはいつも100点でしたか?

アメリカ大統領選での議論「ファクトチェッカーは一歩引くべき」

アメリカ大統領選をめぐるファクトチェックでも、何を検証対象とすべきかという議論はある。

アメリカで偽情報対策に取り組むNewsGuardの編集ディレクターEric Effron氏は「ファクトチェックの限界」と題した記事で、USA Todayなどのファクトチェックに異議を唱えた。

問題としたのは、ドナルド・トランプ前大統領がカマラ・ハリス副大統領を「border czar(国境問題の第一の担当者を意味する)」などと呼んだことを「誤り」と判定した検証だ。

Reality Check Commentary: The Limits of Fact Checks
The debate over Kamala Harris’s immigration work in the Biden administration shows that fact checkers should sometimes stay out of it, writes NewsGuard editorial director Eric Effron

Effron氏はファクトチェッカーによる「バイデン大統領がハリス氏を”border czar”と呼んだことはない」という指摘は正しいと言及した上で、こう述べる。

「そもそもborder czarという公式な役職はない」「多くの報道機関がそういう呼び名を使っていた」「そのことに対してホワイトハウスが記録を訂正したことはない」「バイデン大統領自身も彼女が国境問題に権限を持つという印象を残した」

つまり、政府が公式に「border czar」と呼んでいなかったとしても、それに近い印象や権限を政府は与えている、ということだ。トランプ前大統領がハリス氏を「border czar」と呼んだことをファクトチェックで「白か黒か」で判定するのは難しいという指摘だ。

記事では「NewsGuardは事実を解釈の対象としてではなく、真偽を証明できる主張として考える」と述べ、最後を「ときには、ファクトチェッカーは一歩引いて、政治家と評論家が激論を戦わせるのに任せるのが最善だ」とまとめている。

小池都知事「待機児童、8年間で97%削減」は?

筆者(古田)も同意見だ。「客観的に検証可能な事実」を明快に定義した上で検証し、オピニオンやグレーゾーンの議論とファクトチェックを区別すべきだと考えている。この観点からJFCで記事化を思いとどまった事例は多い。

例えば2024年6月、小池都知事が知事選でアピールした「待機児童、8年間で97%削減」という主張に対し、「統計の運用変更による詐術でデマだ」という指摘が広がった。

調べてみると、2017年に国が待機児童の定義を変更し、全国的に数え方を統一することになった。ただし、その定義変更によって待機児童数が減ったわけではない。東京都は2017年分について旧定義でも算出しており、旧定義の方が人数が少なかった。

また、東京都に確認したところ、2016年を起点にした8年間では確かに97%減っていた。2017年は旧基準で算出された2016年よりむしろ増えており、かつ、2017年以降は数え方は変わっていない。

では、JFCとして小池知事の主張が「正確」で、運用変更による詐欺でデマだという主張を「誤り」と判定するべきか。編集部で検討した結果、最終的には記事化を見送った。理由は隠れ待機児童の問題だ。

国の集計から漏れてしまう「隠れ待機児童」は今も存在する。

特定の保育施設を希望しているなどの理由で、国の定める「待機児童」からは除外されるが、実際には保育施設に空きが出るのを待っている子供達だ(「待機児童2680人、5年連続最少でピーク時の1割に…でも『隠れ待機』は増加 」2023年9月1日、東京新聞、「『待機児童減少』のニュース、本当?」」2024年7月1日、西日本新聞)。

日本共産党東京都議会議員団は、2024年6月に隠れ待機児童について調査し、2024年4月1日時点で回答のあった都内18区24市5町8村の実質的な待機児童は1万2229人いると指摘した(待機児童数の調査結果について)。

小池知事の主張を「正確」と判定すると、隠れ待機児童の問題が存在しないかのような印象を与えかねない。また、国全体の待機児童数も大きく減っているため、東京都だけの話ではないというのが、記事化を見送る決め手となった。

吉村府知事「大阪万博の児童生徒無料招待事業に75%参加希望」は?

検証した結果、「判定保留」とした事例もある。

2025年に開かれる大阪・関西万博で大阪府内の児童生徒が無料招待される事業をめぐり、吉村洋文知事が中間報告として「75%の学校から参加希望」と発言。大阪府交野市の山本圭市長が「不参加の選択肢はなく、実質強制参加」と反論したケースだ。

調べてみたところ、吉村府知事の発言時点で「75%が参加希望と答えている」のは事実だが、山本市長の言う通り、不参加の選択肢がなかったのも事実だった。

「実質強制参加」と言えるかどうかについて、吉村府知事は「参加しませんという学校があるのは当然だと思っている」と発言した。一方で、周辺の市町村が「強制」と感じたかどうかは個々の受け止め方によって異なる。

「実質強制参加である」というのは「雲・雨・傘」で言うと「雨が降りそうだ」という推測や評価の部分と見ることもできる。JFCでは双方の発言を「正確」「誤り」などと判定することは難しいと判断して、事実のみを列挙して「判定保留」とした。

大阪万博の児童生徒の無料招待事業に75%が参加希望?【ファクトチェック】
2025年に開かれる大阪・関西万博で大阪府内の児童生徒が無料招待される事業をめぐり、吉村洋文知事が中間報告として「75%の学校から参加希望」と発言。一方、府内の市長から「不参加の選択肢はなく、実質強制参加」の声が出ました。どちらが事実と言えるでしょうか? 検証対象 2024年5月27日、大阪府の吉村洋文知事が「児童生徒の万博招待事業ですが、現時点で1280校から回答あり、75%に相当する950校もの学校から参加希望がありました。残り25%も未定・検討中です」などとポストした。 吉村知事のポストに対して、大阪府交野市の山本圭市長が5月28日にXに投稿。「回答は『希望する』と『未定・検討中』の二択であり、不参加の選択肢はございません」「これでは、実質、強制参加です」などと引用リポストをした。 山本市長はWebサイトのスクリーンショットと思われる画像も添付している。このポストは2700回以上リポストされ、X上で20万回以上表示された。山本市長は、この件に関して多数投稿している。 検証過程 不参加の選択肢は存在しなかった インターネット上に「2025大阪

ファクトチェック記事と解説記事

JFCでは2020年10月の発足からこれまでに400本を超えるファクトチェック記事を公開してきた。

検証対象を選ぶ時は、拡散した情報の中で、「影響範囲=広さ」「どれぐらい深刻か=深さ」「ユーザーの関心=近さ」の3つの指標を検討し、「客観的に検証可能な事実か」を考えている。公開する記事以上にボツになる記事がある。

JFCファクトチェック指針
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の原則規定を参考にファクトチェックガイドラインを定めて、公正な事実の検証に努めています。詳細はこちらのリンクから確認できますが、このページではその概要や実際の検証の方法論・判定基準を説明します。 そもそもの「ファクトチェックとは何か」についてはこちらをご覧ください。 ファクトチェックとは何か 定義・ルール・手法を解説ファクトチェックとは「事実の検証」を意味します。不確かな情報、根拠のないデマ、陰謀論などが広がる中で、客観的・科学的な根拠に基づいて事実を確認し、拡散している言説が正確かどうかを判定します。 「意見は人それぞれ」「何が事実かを誰かが決めて良いのか」などの批判もあります。ここではファクトチェックとは何かについて、国際ファクトチェックネットワーク( International Fact-checking Network, IFCN)などの規定も参考にしつつ解説します。 ファクトチェックの国際的なルール ファクトチェックは世界中で実施されており、国際的に認められた一定のルールが存在します。

小池知事の「待機児童を97%削減」という発言に対して「現状の定義で言えば、この発言は正確」というファクトチェックをすることは可能だ。しかし、それは隠れ待機児童という課題を見えにくくしてしまう。

「この発言だけを見ると正確とも言えるが、隠れ待機児童問題もある」とまで書くと、それはファクトチェックというよりは、解説記事やオピニオン記事の領域に踏み込む。この記事の見出しに「解説」とつけているのはそういう理由だ。

オピニオン記事はその名前通り、記者のオピニオンを盛り込んだ記事だ。解説記事はニュースやトピックを読み解く記事だが、限られた文字数で説明すると、情報を取捨選択せざるを得ず、記者の視点が色濃く反映されることがある。

フェイクニュースとニュースリテラシー 知られていない記事の読み方【JFCファクトチェック講座 理論編8】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 理論編第7回は信頼できる情報源についてでした。第8回はニュースの読み方などニュースリテラシーについて説明します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 個人の発信もニュースに 政治、経済、社会、文化、スポーツ、趣味など様々な情報がニュースを通じて提供されています。しかし、その内容を正確に理解するためにはニュースリテラシーが必要です。 そもそもニュースとは何か。ニュース番組や新聞記事、Yahoo!ニュースやLINE Newsを思い浮かべる人もいるでしょう。 辞書を見ると「最近の出来事に関する報告」「以前には知られていなかった情報」「新聞などによって報じるもの」という定義があります。友人同士で「すごいニュースがあるんだけど」みたいな会話をすることもあるでしょう。 SNSの普及により、個人が発信した情報もニュースとして広まることがあります。例えば、2021年のアメリカの警察官による黒人暴行死事件では、スマホでその現場を撮影した17歳の女性が報道分野で世界的に有名なピ

Effron氏は前述の記事で「NewsGuardでは、事実を解説の対象としてではなく、真偽を証明できる主張として考える」と述べている。「真偽を証明できる」とはつまり、誰から見てもそれは「正確」「誤り」と納得してもらえるということだ。

例えば、画像や動画が捏造されていることが、オリジナルとの比較で自明だったり、拡散する言説が信頼性の高いデータや資料と明らかに矛盾していたりするときのように。

偽・誤情報対策をより広く

社会課題を包括的に分析したり、深く掘り下げたりする解説記事やオピニオン記事は非常に重要だ。一方で、JFCで取り組んでいるファクトチェックの多くは一見、「それが間違っているのは自明だ」と思えるものが多い。

しかし、JFCと国際大グロコムで実施した2万人調査では、そういった偽・誤情報でも実に51.5%の人が「正しいと思う」と答えた。

【2万人調査】偽・誤情報、日本での拡散の実態と効果的な対策とは
日本ファクトチェックセンター(JFC)などが2024年4月16日に都内で開いた偽情報対策シンポジウム。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)がJFCと協力して実施した偽情報の実態に関する2万人調査の概要を解説しました。以下はシンポでの発表のまとめです。 アーカイブ動画と報告書(全文)と概要版は文末へ。 山口真一GLOCOM准教授「衝撃的な数字」 GLOCOMの山口真一准教授は経済学博士で専門は「計量経済学」。SNS上の偽情報、誹謗中傷、ネット炎上といった社会問題や、情報社会の新しいビジネスモデルなどについて実証研究をしている。今回の調査は2024年2月に実施され、アンケートが予備調査2万件、本調査5000件、文献調査、インタビュー調査、有識者会議と多岐にわたる。 14.5%しか誤っていると気づかない アンケートでは5つの分野(政治:保守有利、政治:リベラル有利、医療・健康、戦争・紛争、多様性)で計15件の実際に拡散した偽情報について、見聞きしたことがあるかを聞いた。 結果は全体で37%が「見聞きしたことがある」。現実に社会に広が

「人工地震説」のようなあからさまな陰謀論や、マイノリティへのヘイト混じりの言説、海外からの影響工作など、誰かが検証を続けなければ、トンデモ論でも野放図に広がる。その結果が今の状況だ。

JFCは徐々に体制を強化し、2020年の発足当時は月10本程度だった記事本数が、2024年8月現在では動画も含めて月30本以上を配信できるようになった。今後も拡散する偽・誤情報へのファクトチェックを続けつつ、こういった解説記事や迫る総選挙での候補者の発言の検証などにも取り組んでいく予定だ。

それが、より幅広く重層的な偽・誤情報対策につながる。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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偽・誤情報の影響やその対策などの状況を総合的に把握するため、日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研と共同で「情報インテグリティ調査」を実施しました。予備調査2万人、本調査5000人を対象に、JFCが実際に検証した15の偽・誤情報を使った影響調査の他、望ましい対策などを聞きました。 偽・誤情報の影響として「ストレスや不安を感じる」(48.3%)や、「ニュースに関する関心が低下した」(44.4%)などの回答が目立っています。 一方で「ファクトチェックをおこなったことがない」(47%)、「検証方法を学んだことはない」(64.3%)など、個人でも実践できる対策は普及しておらず、デジタル時代の情報環境を理解するための基礎的な用語の理解もほとんど広がっていないことが明らかになりました。 詳細版は月内に発表予定で、ここでは概要を紹介します。 偽・誤情報の影響「ストレス感じる」「ニュースに対する関心が低下した」 調査によると、「インターネット上の誤った情報・ニュースの存在があなたのニュースに対する態度や行動にどのような影響を与えていますか」という質問に対して「

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仏政府「第三次世界大戦が来る」と国民に食料備蓄指示? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

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フランス政府が「第三次世界大戦が来る」として国民に食料備蓄を指示したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているのみです。 検証対象 2025年3月25日、「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」という投稿が拡散した。この投稿は2025年3月31日までに296万回以上の閲覧回数と4500件以上のリポストを獲得している。 検証過程 検証対象のリンクは、まとめサイト「ツイッター速報〜BreakingNews」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」で、The People’s Voice(TPV)が2025年3月20日に配信した記事「France Orders Citizens to Stockpile Food: “World War 3 Is Coming This Year”」を引用元にしている。 TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真

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運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開

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運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開しましたのでお知らせいたします。JFCでは運営委員会を設置し、編集部がファクトチェックガイドラインに則って検証を実施しているかなど評価しています。運営委員会の内容は、運営委員会報告書として掲載されます。 また運営委員会と編集部全体のガバナンスが適正か確認する監査委員会を設置し、運営委員会報告書を閲覧するなどして監査を行っています。監査委員会の内容は監査委員会報告書として掲載されます。  なおこれらの適切な運用を図るためにルールを制定しており、「日本ファクトチェックセンター設置規程」(規程全文はこちら)及び「日本ファクトチェックセンター監査委員会運営規程」(規程全文はこちら)を公開しています。 これからもJFCは透明性確保のため、情報公開に努めて参ります。 運営委員会報告書2024年12月12日(報告書全文はこちら) 第1 運営委員の任命並びに委員長及び副委員長等の任命プロセス 第2 編集部メンバーの採用等編集に関わる人員 第3 外部機関との連携 第4 プラットフォーマー連携 第5 ファクトチェック記事の公開状況 第6 財務報告 第7 国

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月19日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0419.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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