フェイクニュースとアルゴリズム YouTubeやTikTokが便利で危険な理由 【JFCファクトチェック講座 理論編3】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。
理論編の第2回は偽・誤情報を信じてしまう要因として「認知バイアス」について解説しました。第3回は、便利な存在であるインターネットがその認知バイアスを強化していく形で人を偏らせていく構造について説明します。
(本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています)
インターネットの情報洪水
インターネットとスマートフォンの普及により、誰もがいつでもどこでも情報を発信・受信できるようになりました。
さらに、SNSや動画プラットフォームが加わり、情報量は激増し、個人が見たい情報を自分で探し出すのが困難になっています。
プラットフォームの役割
そこで活躍するのが、情報を整理し、提供するプラットフォームです。
多くの情報がプラットフォームに集約され、そこにユーザーが集まり、多くのユーザーが集まることで、情報の出し手もそこに集まります。多くの路線が乗り入れる駅のようです。
プラットフォームと言っても、様々な種類がありますが、情報とユーザーがそこに集まり、プラットフォームは情報を選択してユーザーに届けるという点は共通しています。
ヤフーニュースやスマートニュース、Facebookやインスタグラム、YouTubeやTikTokなどが例です。これらのプラットフォームは、ユーザーの好みに応じて最適化した情報を提供します。
アルゴリズムの働き
例えば、YouTubeのホーム画面には、ユーザーの関心に基づいた動画が次々と表示されます。
これはアルゴリズムによるもので、視聴履歴やフォローしているアカウントなど、多くのデータを基に計算されています。このようにアルゴリズムは情報洪水の中からユーザーに最適な情報を選び出します。
パーソナライズとアテンションエコノミー
アルゴリズムによってユーザーに最適化された情報提供は、プラットフォームに人を集め、広告も配信することで、莫大な広告収入をもたらします。
ユーザーが長時間プラットフォームに滞在すれば、さらに広告の露出が増え、収益は上がります。
ユーザーの関心が高いコンテンツの存在が経済的な利益に直結する。これをアテンションエコノミーと呼びます。
フィルターバブルとエコーチェンバー
あなたが好きなコンテンツが自動で選ばれ、プラットフォーム側も収益が上がる。いいことづくめに見えますが、怖い面もあります。
アルゴリズムにより選別された情報だけがユーザーに届く様子をフィルターバブルと呼びます。目には見えない透明のバブル(泡)のフィルター(膜)を通り抜けたコンテンツしか届かない状況です。
また、同じ意見を持つ人々が集まり、お互いの声が反響し合う部屋の中に閉じこもってしまうような現象をエコーチェンバー(反響室)と言います。
フィルターバブルで知らないうちに自分好みの意見を多く目にするようになり、自分と意見が近いグループを探してその人たちとの交流をエコーチェンバーの中で深めていく。
それは人に元々備わっている確証バイアスを強化し、偏りを強めていく効果があります。
分断の加速が事実の共有を阻む
偏りを強化される人が増えていくと、社会はどうなるでしょうか。
人それぞれ意見が異なることは当然ですが、問題はバイアスやネットによって分断が加速していくことです。
アメリカではいまも2020年の大統領選挙はトランプ候補が勝っていたと信じる人たちが、共和党支持者に多数います。選挙の結果という民主主義国家の基礎ともいうべき事実ですら共有できない状況です。
次回はクリティカルシンキング
アルゴリズムの働きを理解することで、自分がなぜ今、こういう情報を目にしているのか。自分が何に影響を受けているのかを確認しながら情報に接する心構えができます。
では、実際に情報に接する際に大切な考え方は。次回はクリティカルシンキング=吟味する思考について説明します。
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