フェイクニュースとバイアス 「私は大丈夫」が危ない 【JFCファクトチェック講座 理論編2】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。
理論編の初回はファクトチェックの対象、偽・誤情報の定義や分類について解説しました。第2回は、なぜ人々が偽情報に騙されやすいのか、そしてその原因となる「認知バイアス」について説明します。
(本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています)
認知バイアスとは
認知バイアスとは、自分自身の経験などに基づいて無意識のうちに非合理な考えをしてしまうこと。誰しもが持っている偏りや先入観のことを指します。
騙す側は認知バイアスを意識的・無意識的に利用して偽情報を作るため、そのテクニックを知ることで騙されにくくなります。
ミュラーリヤーの錯視?
第0回で紹介したミュラーリヤーの錯視を覚えていますか?矢印が内向きになっている方が長く見える錯覚です。
この図をみた瞬間に「上の方が長く見えるけれど、同じ長さなんでしょ。そんなの知っているよ」と思いましたよね。
それがあなたのバイアスです。実はこれ、ひっかけ問題なんです。
わかりましたか?
実は、矢印が内向きで錯覚で長く見える上の線をわざと短く描いています。
この図を見た瞬間に「知ってるよ、同じ長さだよ」と思ってしまうのは先入観の影響です。
見慣れたものに関して、すぐに「あれだ」と思い込んでしまう。これが先入観であり、バイアスです。
長さが同じかどうかは、毎回、検証してみないとわかりません。
すっぱい葡萄と認知的不協和
イソップ寓話の「すっぱい葡萄」をご存知でしょうか。お腹をすかせたキツネが美味しそうな葡萄を見つけるお話です。
美味しそうだと飛びつく。でも、高い木の上だから手が届かない。
無理だとわかった瞬間に「どうせあの葡萄は酸っぱい」と自分を納得させる。
脳は不快感を和らげるために、根拠のない情報を事実として認識してしまいます。これが「認知的不協和」と呼ばれる現象です。
自己奉仕バイアスによるメディアへの偏った評価
バイアスにはたくさんの種類があります。
例えば、人は自尊心を保とうとする傾向があり、これを「自己奉仕バイアス」と呼びます。
成功は自分の能力によるもので、失敗は自分のせいではないと思い込む。自分の価値観を肯定してくれるメディアに高評価を与えがちになる。
これは日本だけでなく、世界中で同じ傾向が見られます。
「自分は大丈夫」はダニング=クルーガー効果?
ダニング=クルーガー効果とは、自分のことを過大評価し、他人のことを過小評価する傾向のことです。
知識が浅い人ほど逆に自信を持ち、知識が深い人ほど謙虚になる。知識の深さに反比例して自信が増減する。
知識が浅くて自信がある人ほど、ちゃんと調べずに情報の真偽を思い込みで判断し、知識が深くて謙虚な人ほど、慎重になります。
危険な確証バイアス
特に覚えてもらいたいのが、確証バイアスです。自分好みの情報を無意識に取捨選択してしまう現象です。
自分の考えを裏付ける情報を重要視し、異なる意見を排除する傾向があります。
チェリーピッキングで情報をつまみ食い
確証バイアスは、意識的な行動にも影響を与えます。頭に自然と残った情報に基づき、自分で意識的に自分に都合の良い情報を集めてくる。
いわゆる「チェリーピッキング」です。情報のつまみ食いによって偏りが強化されます。
次回はバイアスと相乗効果のあるネットやSNS
認知的不協和や確証バイアスといった脳の特性を知ることは、情報の送り手にも受け手にも非常に重要です。
しかし、これだけでは十分ではありません。
これらの脳の特性と相乗効果を持つインターネットやSNS、動画プラットフォームの影響、アテンションエコノミー、フィルターバブル、エコーチェンバーなどについて、次回詳しく解説します。
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