OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。
実践編第5回は、生成AIで作られる画像や動画の検証についてでした。第6回は公開されている情報に基づいた調査=OSINTについて解説します。
(本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています)
OSINTとは
オープンソースインテリジェンス(Open Source Inteligence=OSINT)とは、一般に公開されている情報を収集し分析する手法のことです。
近年、調査報道やファクトチェックに活用されており、オンライン調査とも呼ばれます。日本ファクトチェックセンター(JFC)でもこの手法を活用しています。
現実の画像かどうかOSINTで確認する
実例で見ていきます。
実践編第5回でも紹介したように、2022年9月の静岡県の水害では、生成AIによる偽画像が拡散しました。
この画像が生成AIによるものだという報道が広がると、今度は「他の画像も偽物ではないか」という疑いがネット上で広がりました。
そこでJFCではOSINTを用いて、偽物であると疑われた画像が本物か確認しました。
ジオロケーションを活用する
OSINTでよく用いられるのがジオロケーション、つまり地理的な情報の特定です。その写真や動画がどこで撮影されたのかを様々なヒントから検証していきます。
静岡県の水害の際は、様々な被害写真がネットにアップされ、それらの真偽が話題となりました。JFCでは以下の写真について、ジオロケーションの手法で実際の被害画像であると特定していきました。
投稿者を確かめる
SNSで拡散している画像の投稿者は撮影者とは限りません。どこかで見つけた画像をアップしていることも多々あります。そのため、まずはオリジナルの投稿を見つけることが重要です。
実践3「画像の検索の手法を使うと、左上の画像を最初に投稿した人がすぐに見つかります。前後の投稿を見ると、静岡市清水区周辺で撮影したと書いています。
Googleマップを活用する
具体的な地名がわかれば、地図の出番です。Googleマップで静岡市清水区で検索すると、以下の地域に絞り込めます。
これではまだ広すぎて、どこで撮影した写真かを見つけることは不可能です。
ここで投稿された写真にヒントが映っていないかを探してみます。
遠くに高架の道路が写っていることがわかります。これは大きなヒントです。
Googleマップで高架の道路を探すと、可能性がありそうな大きな道路が2つ見つかります。東名高速道路と国道1号です。
ストリートビューを活用する
ここから先は根性です。それっぽい場所を丹念に探していきます。
ヒントは写真に写っていた撮影者のいる道路と垂直に交わっている高架の道路。左右には2回建ての住宅が並ぶ住宅地。
使うのはストリートビューという現地で道路から撮影した映像を見る機能です。
Googleマップの右下にある黄色の人型の人形(ペグマン)をクリックして持ち上げると、ペグマンをおける道路が水色で示されます。
国道1号に垂直に交わっている道路は少ないので、東名高速と垂直に交わる道路にペグマンを何回かおきながら、ストリートビューの画像を確認していきます。
すると、遠くに高架があり、建物が似ている場所が見つかります。
あとはストリートビューの位置を調整していくだけで、撮影場所とほぼ同じ地点が見つかります。
建物や電柱などを見ると、特徴が全て一致します。
ジオロケーションは世界中で使える
Googleマップは世界中の地域の多くを網羅しているため、海外の画像でも検証可能です。実例を見てみましょう。
2024年1月の関東での地震の際に「地震雲だ」と拡散した動画についてもOSINTを使用して検証しました。
こちらもGoogle画像検索を使い、この動画が2023年11月にTikTokに投稿されたものであることを確認しました。この段階で2024年1月の地震とは関係がないことがわかります。
次にどこで撮影されたものかを検証します。ヒントは車のナンバープレートです。国によってデザインが違うため、検索して同じようなデザインの国を探します。
すると、この左側に赤い縦線が入ったナンバープレートはカタールのものであることがわかります。
あとは周辺に建物がなく、公園のように見えることからカタールの大きな公園付近を探していくと、動画と同じ特徴的なデザインの街灯が見つかります。
次回は便利なサイトやツールの紹介
OSINTはジオロケーションだけでなくて、あらゆる公開情報を活用します。次回は、多くの情報を得られる便利なサイトやツールを紹介します。
アンケートにご協力を
動画を見た方は、ぜひ簡単なアンケートにご協力ください。 https://forms.gle/QdVa9A5v3RDnfBW59
検証手法や判定基準については、JFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、SNSでの拡散にご協力ください。X、Facebook、YouTube、Instagramのフォローもお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録はこちらからどうぞ。
また、こちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を。