古田大輔(Daisuke Furuta)

ジャーナリスト/ファクトチェッカー 朝日新聞記者、BuzzFeed Japan創刊編集長を経て独立。2020-2022年Google News Labティーチングフェロー。2022年9月に日本ファクトチェックセンター編集長に就任。その他、デジタル・ジャーナリスト育成機構事務局長など。ニューヨーク市立大院News Innovation and Leadership 2021修了。

Tokyo
古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェック講座3:検証の4ステップ 「横読み」で効率的に

講座

JFCファクトチェック講座3:検証の4ステップ 「横読み」で効率的に

今回は、情報の検証をする上で必要な行動を4段階に分けてお伝えします。これだけ情報が氾濫する中で、全てについて4つを実践するのは不可能だ、と感じる人もいるでしょう。ステップ1だけで十分なこともありますし、効率的に実践するための「ラテラル・リーディング(横読み)」も紹介します。 では、「検証の4ステップ」の解説から始めます。まずはこちらを御覧ください。 1.発信元を見る 「その発信元は信頼がおけるか」。あらゆる情報について発信元を確認しましょう。匿名でも信頼のおける情報源は存在しますが、まったく知らない匿名の情報源を信頼するのは危険です。 「その情報を知りうる立場か」というのは、一つの目安になります。事件や災害について、直接的な関係がない人、調査や取材に携わらない人が重要な情報を知っている可能性は低いでしょう。情報を知りうる立場でも、利害関係者の場合は自分に都合が良いように発信している可能性があります(客観的な情報発信をしている場合もあります)。 2.疑義の指摘を確認する 「リプライやコメント欄を確認」しましょう。改変された画像や動画などは、何度も拡散し

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェック講座2 :検証は効果あり 検索やAIにも反映される

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JFCファクトチェック講座2 :検証は効果あり 検索やAIにも反映される

ファクトチェックは、どんな情報でも検証できるわけではありません。初回に説明したように、意見や憶測ではなく「提示された事実」だけが対象ですし、数量的なデータや信頼性の高い証拠がなければ検証は困難です。 それだけ限定された手法ながらも必須と言えるのはなぜか。検証可能なはずの偽情報/誤情報が蔓延し、信じてしまう人たちがいるからです。インフォデミック(情報汚染)とも呼ばれる現状について、ファクトチェックが役立つことを示すデータとともに解説します。 多くの人が偽情報/誤情報に接している 国際大学GLOCOMによる調査「Innovation Nippon 2022: わが国における偽・誤情報実態の把握と社会的対処の検討」は、2021年1~10月にファクトチェックされた偽情報/誤情報12件(コロナワクチン関連6件、政治関連6件)について、それぞれ、どれだけの人がそれらを目にし、正しい情報と信じたかを調べています。 「コロナワクチンを打つと不妊になる」「選挙機材大手『ムサシ』の大株主が安倍晋三元首相であり、不正が行われやすくなっている」など、保守・リベラルのバランスにも配

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェック講座1:意見や推測ではなく事実を検証する

講座

JFCファクトチェック講座1:意見や推測ではなく事実を検証する

フェイクニュース、デマ、嘘、誤情報/偽情報...。呼び方は様々ですが、世の中には不正確な情報が溢れています。間違った情報を信じたり、拡散したりしないためには、基本的なファクトチェック(情報の検証)技術を学んでおく必要があります。 日本ファクトチェックセンター(JFC)の「ファクトチェック講座」では9回にわたって、ファクトチェックの基本的な考え方や便利なツールの紹介、新たな脅威として注目されるAIコンテンツへの対策まで解説します。 2016年のアメリカ大統領選が節目に まず、講師を勤める私とファクトチェックの関わりから紹介します。 ファクトチェックが世界的に注目されたきっかけの一つは、2016年のアメリカ大統領選です。「ローマ法王がトランプ候補を支持」「ヒラリー・クリントンはドナルド・トランプの立候補を望んでいた」など全く根拠のない偽情報が、CNNやNew York Timesなどの主流メディアの記事よりもFacebook上で拡散していた、とBuzzFeed Newsがスクープしました。 当時、BuzzFeed Japan創刊編集長だった私は、日本で

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ?カナダ以外の国にもLGBT差別を禁じる法律がある【ファクトチェック】

LGBTQ

LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ?カナダ以外の国にもLGBT差別を禁じる法律がある【ファクトチェック】

「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」などの言説が拡散していますが不正確(ミスリード)です。実際には、G7各国に「性的指向」「性自認」に基づく差別を禁止する法律があります。 検証対象 「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」「日本だけないというのは誤り」などの言説は、複数の国会議員のツイートなどで拡散している(例1,例2)。表示回数が100万件を超えるものもある。 投稿によって、「G7の中でLGBT差別禁止法がないのは日本だけというのは活動家の嘘」などの批判が広がっている。各国の法律を確認する。 検証過程 衆議院法制局は各国の法律を例示 「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」「日本だけないのは誤り」などの言説の根拠となっているのは、衆議院法制局が2023年4月28日に自民党の会合で示した資料だ。 資料では、G7各国の法制度を憲法レベルと法律レベルで比較している。 憲法:いずれの国にも、憲法で差別禁止・平等原則に係る規定が存在する(成文憲法典のない英国を除く)。 法律:いずれの国にも、性的指向・性自認に特化して差別禁

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
国内最多のファクトチェック記事を配信・動画も開始 JFC設立半年、検証講座や教材の開発へ

その他

国内最多のファクトチェック記事を配信・動画も開始 JFC設立半年、検証講座や教材の開発へ

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の発足以来、約半年で国内最多*のファクトチェック記事を配信しました。編集部の体制を拡充し、4月にはショート動画も開始。国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証団体となるため、審査を申請中です。 JFCが公開したファクトチェック記事は4月28日現在で89本あり、note上のJFCページで閲覧可能です。検証対象は「言説」「画像」「動画」に分類され、それぞれ、検証過程を解説することで、読者が検証手法を学び、自ら実践できる内容となっています。 Yahoo!ニュースへの配信で多くの読者を獲得している他、Twitter、Facebookなどのソーシャルメディアへも配信。「ケムトレイル」などの根強い陰謀論では、Google検索結果のトップページに表示され、マイクロソフトbingのAIチャットでも回答に引用されています。 より多くのユーザーに届くよう、動画の各プラットフォーム(YouTube、X(Twitter)、Facebook、Instagram、TikTok)での配信も開始しており、さらなるリーチの強化を図ってい

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
雪印北海道バターには実は30%マーガリンが入っている?【ファクトチェック】

医療・健康

雪印北海道バターには実は30%マーガリンが入っている?【ファクトチェック】

「雪印北海道バターには実は30%マーガリンが入っている」という内容のツイートが拡散しましたが、根拠は示されておらず、発売する雪印メグミルクは否定。投稿はアカウントとともにすでに削除されています。 検証対象 2022年12月19日に、雪印メグミルクが販売する「雪印北海道バター」の画像付きで、以下のツイートが拡散した(ツイートと投稿アカウントはすでに削除されている)。 この有名な雪印のバターは、表にも裏にも書いてないけど、実は30%マーガリンが入っています。完全に騙している。明治、森永、雪印は人生から排除なり。 このツイートに関連して「あたかもバターみたいな詐欺的な売り方辞めい!」などと、同調するようなツイートも広がった。 検証過程 バターやマーガリンは厚生労働省令やJAS規格で「バターは乳脂肪分80パーセント以上」といった成分規格や製造法などが規定されている。原料から製造手法まで全く違うため、途中で誤って混入することはない。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は厚労省食品監視安全課に取材した。雪印メグミルクの雪印北海道バターに関して、マーガリンが

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
(動画)サッカーW杯で日本サポーターがゴミを散らかしている?【ファクトチェック】

文化・エンタメ

(動画)サッカーW杯で日本サポーターがゴミを散らかしている?【ファクトチェック】

中東・カタールで開催中のサッカーワールドカップ(W杯)で、「日本サポーターがゴミを散らかしている」という英文のツイートが動画と共に世界で拡散しました。これはゴミを片付けている動画を逆回転して、散らかしているように見せており、誤りです。 検証対象 W杯の会場で、「日本のサポーターが袋からゴミを取り出し、スタジアムのあちこちに笑いながら捨てている。恥ずべき光景だ」という内容の英文ツイートが動画とともに拡散した。添付された動画では、日本代表のユニフォームや法被姿の人たちが、袋からゴミを取り出してスタジアムの座席付近に置いているように見える。 リプライを見ると、大多数の人が「動画は逆再生されている」と指摘している。「冗談じゃないか」というコメントもある。 だが、このツイートのスクリーンショットが海外のネット掲示板に貼られ、日本への嫌悪感を示すコメントが書き込まれるなどの影響も出ている。 検証過程 Google Chromeの拡張機能InVIDを使って動画から画像を切り出し、その画像をGoogleレンズで検索すると、ペルーのニュースサイトの記事が見つかる。

By リサーチ チーム, 古田大輔(Daisuke Furuta)
(動画)遺体が動いてる?気候変動デモの映像に、ウクライナ侵攻のテロップを被せたもの【ファクトチェック】

国際

(動画)遺体が動いてる?気候変動デモの映像に、ウクライナ侵攻のテロップを被せたもの【ファクトチェック】

ロシアのウクライナ侵攻を報じるニュースのように見える映像の背後の「遺体が動いている」という動画が拡散していますが、誤った内容です。元になった映像は、オーストリア・ウィーンであった気候変動対策についてのデモを撮影したもので、ウクライナ侵攻とは関係ありません。 検証対象 「遺体が後ろで動いてる」という文言とともにTwitterで動画が拡散した。Twitterは、動画の中で記者らしき人が、黒い布のようなもので覆われた多くの遺体のようなものをリポートしているが、その最中に後ろで「遺体」が動いている、と指摘している。 ツイートのリプライ欄には「日本のテレビでは、間違っても放送されない事実」「茶番さっさとやめてくれ」などという反応がある。一方で「この映像はウィーンの気候政策のデモ」と指摘する声もあった。 検証過程 動画を右クリックして、動画のアドレスをコピーする。Google Chromeの拡張機能InVIDのVideo analysisでこのURLを調べると、動画から画像が切り出され、その画像をGoogle画像検索にかけることができる。 画像検索の結果から、ア

By 古田大輔(Daisuke Furuta)