敷島製パンが「政府の補助金欲しさに、コオロギを美化」は誤り【ファクトチェック】

敷島製パンが「政府の補助金欲しさに、コオロギを美化」は誤り【ファクトチェック】

敷島製パンが政府の補助金欲しさにコオロギを美化している、という言説が拡散していますが、これは誤りです。敷島製パンはフードテックの一環として、食用コオロギパウダーを使用した商品をオンライン販売していますが、これに対して国からの補助金交付はありません。

検証対象

敷島製パンが食用コオロギパウダーを使用した商品の販売をしていることに対して、「政府からの補助金が欲しさに、コオロギを美化?!」などとコメントしたツイートが拡散した(2023年2月26日投稿)。2023年3月22日時点で、リツイートは8900件以上、表示回数は175万件以上となっている。

リプライ欄には、「パスコ買ってたけど、自分も辞めました」、「小さい頃から、食べていたけど、コオロギ粉末入りは流石にいらない」など、同社の製品の不買を示唆する反応があった。一方、「超熟にコオロギ入ってないだろ」「コオロギ関連の物は専用工場で作られてるから他のパンは大丈夫なんだけどなぁ」などと、コオロギパウダーを使用した製品が同社のごく一部であることを指摘するコメントも見られた。

取り上げたツイートは、Pascoブランドで知られる敷島製パンが「政府の補助金欲しさ」と書き、一部で事実かのように拡散している。日本ファクトチェックセンター(JFC)で、この点を検証した。

検証過程

同社HPによると、2020年から、FUTURENAUT社の食用コオロギパウダーを使用した商品を「Korogi Cafe」シリーズとして展開している。

JFCは、昆虫食への補助金交付について農林水産省に問い合わせた。昆虫食にかかわる事業への支援をしているのは、農水省の新事業・食品産業部企画グループと農林水産技術会議事務局研究推進課の2つのみだという。

フードテック分野の支援に取り組む新事業・食品産業部企画グループによると、2021年度補正予算「フードテックを活用した新しいビジネスモデル実証に対する支援事業」(予算規模1億円)においては10件、2022年度予算「フードテックを活用した新しいビジネスモデル実証事業」(予算規模3000万円)においては2件を採択した。

これらの事業者のなかで昆虫食に取り組んでいるのは、敷島製パンとは別の1社のみ。採択された会社は、コオロギ食ではなく食用カイコの食品製造・研究を行う企業だ。採択企業のリスト(第一次公募採択第二次公募採択2022年度公募採択)も確認したが、補助金の交付先に、敷島製パンの名前はなかった。

また農林水産技術会議事務局は、2021年度、昆虫食に取り組むスタートアップ企業1社(本社・徳島県)に研究委託費3000万円を交付したのみだという。「当課が所管する予算事業において、敷島製パン㈱に対して予算を支出したことはありません」とも回答した。 

その他にも、敷島製パンが政府の補助金をもらっている事実は確認できなかった。JFCは敷島製パンにも問い合わせたが、広報室からは「現時点においては今回いただきましたご質問の回答は差し控えさせていただきたく存じます」と回答があった。

判定

農水省の昆虫食に関する補助金交付先として、敷島製パンが含まれていないことから、敷島製パンが「政府の補助金欲しさに、コオロギを美化」しているという言説は誤りであると判定した。

検証:高橋篤史
編集:古田大輔、藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現 公式が注意喚起

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現 公式が注意喚起

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現しています。公式アカウントが「投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけています。 リプライに投資を呼びかける偽アカウント X(旧Twitter)で東京新聞編集局の投稿にリプライ形式で投資を呼びかけるなりすましのアカウントが出現した。 2024年5月8日、東京新聞編集局の公式アカウントが「『東京新聞編集局』を名乗って、同じアイコン、背景を使って投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけている。 なりすましアカウントは、公式アカウントの投稿にツリー形式で表示されるリプライを付けている。公式アカウントと同じアイコンでLINEの友達追加を促している。 公式アカウントは8万以上のフォロワーがいるのに対し、偽アカウントは5月9日15時の時点で0人だ。またIDも英数字の羅列になっている。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告がSNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り 自身が国会で認め、記録も存在【ファクトチェック】

杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り 自身が国会で認め、記録も存在【ファクトチェック】

自民党の杉田水脈衆議院議員が「そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していません」とX(旧Twitter)に投稿しましたが、誤りです。2016年2月に投稿した記録がアーカイブで残っており、2022年11月の参議院予算委員会で杉田氏自身も認めています。 検証対象 2024年5月2日、自民党の杉田水脈衆議院議員がX(旧Twitter)で、「杉田水脈議員の在日コリアン投稿 人権侵犯と認定 大阪法務局」というNHKの記事(2023年10月)を否定した。 杉田氏は、NHK記事を引用した別アカウントに返信する形で「残念ながらこのNHKの記事、事実とは程遠いです。そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していませんし」などと主張している。 2024年5月7日時点で、杉田氏のポストは180万回以上の視聴と3600回のリポストがあり、引用元のコメントにも37万回以上の閲覧がある。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、杉田氏が「民族衣装のコスプレおばさん」と投稿したかどうかを調べた。 「大阪法務局が杉田氏を人権侵犯と認定」と各社が報

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】

「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】

日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。 検証対象 2024年5月1日、X(旧Twitter)で、「日本政府はワクチンを接種した人の献血を禁止。"汚染された血液"」というコメントと、岸田文雄首相の写真を付けたポストが拡散した。ポストは、科学者を名乗る人物の英文の投稿「Japan to ban vaccinated people from donating ‘tainted blood’」を引用している。 5月7日から8日にかけてこの投稿はXによって削除されたが、120万を超える閲覧数があり、「80%の日本人のは、もう献血できない」「日本赤十字社どうするんだろうね?」 と言ったコメントがついたほか、「こないだ献血しましたよワクチン2回と問診にこたえてますが」という投稿に疑問を投げかけるコメントもあった。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、厚生労働省医薬局血液対策課に取

By 宮本聖二
政治関連の偽・誤情報の拡散/SNS規制求める声/AIがもたらす危機【注目のファクトチェック】

政治関連の偽・誤情報の拡散/SNS規制求める声/AIがもたらす危機【注目のファクトチェック】

✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 衆院補選の影響もあり、政治関連の偽・誤情報が拡散しました。こういった状況を受けて、各社の世論調査ではSNS規制を求める声が高まっています。法的な規制には、言論の自由への悪影響も懸念されており、慎重な議論が必要ですが、同時にAIなどで広がる危機への素早い対策も求められています。 JFCのファクトチェック記事 「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 衆院補選について「開票が始まっていないのに当確が出たのは不正選挙」という言説が拡散しましたが、誤りです。報道各社が事前取材と有権者への調査などに基づいて投票締め切り直後に当選確実を報じたもので、一般的な手法です。 「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 出口調査や事前の取材によるゼロ票打ち【ファクトチェック】衆院補選について「開票が始まっていないのに当確が出たのは不正選挙」という

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)