「(動画)ビル・ゲイツが予防接種は間違いと認めた」は誤り【ファクトチェック】

「(動画)ビル・ゲイツが予防接種は間違いと認めた」は誤り【ファクトチェック】

「ビル・ゲイツが予防接種は間違いと認めた」という書き込み付きの動画が拡散しましたが、誤りです。動画につけられた日本語訳が間違っており、彼の実際の発言と内容が異なっています。

検証対象

「ビル・ゲイツが予防接種は間違いと認めた」という内容の動画はTwitterやTikTokなどで拡散している(例1例2)。

画像

再生回数が35万件、引用含むリツイートが5000回を超えているものもある。リプライ欄を見ても、この情報を信じている投稿が多数見られる。

検証過程

動画の中でビル・ゲイツ氏の後ろに映っているボードの文字から「92Y Bill Gates」と検索すると元動画「Bill Gates with Fareed Zakaria: How to Prevent the Next Pandemic」が見つかる。2022年5月4日に配信された配信された動画で、ゲイツ氏が新著に関連してパンデミックやワクチンについて、CNNのファリード・ザカリア氏の質問に答えている。

検証対象の動画は、元動画の計23分40秒から約40秒間を切り取ったものだ。

この約40秒間の発言の前にゲイツ氏はパンデミックの再発を防ぐために国際的な協力が必要だと強調した。それについて、ザカリア氏が新型コロナウイルスで中国が情報開示に非協力的だった例を挙げて、国際的な協力は難しいのではないかと問いかけている。

それに対して、ゲイツ氏は「確かに中国はもっと協力することができた」と同意した上で、今回の教訓を経て、中国でまた流行が再発した場合には、より積極的な情報開示があるだろうと述べ、以下の発言をした。

「ある会議に2月上旬に出席したとき、専門家たちが『もう無理だ。診断を受けずに旅行する人が多すぎて、封じ込められない』と言いました。その時点では、私たちはよく理解していませんでした。致死率がかなり低くて、実際にはちょっと違うけれど、主に高齢者がかかるインフルエンザのようなものだと考えていました。そのため、米国を含む世界が必要以上に警戒態勢をとりませんでした。かなり恐ろしい時期でした」

この部分を切り取って「ビル・ゲイツがコロナは大したことがなかったと認めた」と受け取った人たちがいる。しかし、対話はさらに続き、新型コロナの危険性について、問題は致死率だけでなく、感染率の高さであると指摘している。

また、ゲイツ氏は「mRNAワクチンは奇跡的だったが、次回にはさらによいワクチンや治療法が開発されるだろう」と発言している。mRNAワクチンを評価し、今後の改善に期待していることがわかる。

判定

切り取られた動画の中にゲル・ゲイツ氏がワクチンを否定する発言はなく、さらに元動画を見ると肯定的な発言もしているため「ビル・ゲイツが予防接種は間違いと認めた」という情報は誤り。

あとがき

JFCは動画で拡散する誤情報や偽情報への対策として、動画でも検証コンテンツを配信しています。

YouTubeTwitterFacebookInstagramTikTokなどのアカウントで今後も継続的に動画コンテンツを配信していきますので、ご参照ください。

検証:古田大輔、リサーチチーム
編集:宮本聖二

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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